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タニサケの コラム

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ナメクジさんの知られざるひみつをわかりやすく解説します。(カタツムリもほぼ一緒)

ナメクジ

◇ナメクジさんの身体のひみつ◇

ナメクジさんは乾燥が大の苦手なので全身を粘液で覆って乾燥から身を守っています。
この粘液はムチン(mucin※)という動物の胃粘膜と同じ成分で、私たちの眼・鼻・のどを乾燥から守っている物質と同じです。

※mucin;英語では動物粘液のmucusに対して,植物粘液はmucilageと別名称であり、別物です。
参考;ムチン奇譚: 我が国における誤った名称の起源 (丑田 公規 著) 生物工学 第97巻 第1号(2019)

ナメクジさんの眼のひみつ

ナメクジさんの顔には大触角と呼ばれる眼と小触角と呼ばれるヒゲが付いています。
眼はほとんど見えておらず光を感じる程度で、物を識別しながら進むわけではありません。
ヒゲにはヒトでいう鼻と舌の役割があり、においや味を感じることができます。
眼が見えないのでにおいを頼りに餌を探しています。

カタツムリの画像
長いのが眼、短いのが鼻
(カタツムリも一緒) 

ナメクジさんの性のひみつ

ナメクジさんの身体には雌と雄の2つの生殖器が備わっており、孤立した際には自ら卵を産んで子孫を残すことができる雌雄同体(しゆうどうたい)という特殊な身体を持っています。
ただし、個体群密度が満たされている時は別個体と交尾して、それぞれの精子嚢(せいしのう; 精子の入った袋)を交換して受精し、各々が産卵します。
ナメクジさんは低温短日環境下で性成熟するため、産卵は厳寒期を除く10月下旬以降~翌春4月中旬頃にかけて行われます。

ナメクジの交尾
ナメクジの交尾

ナメクジさんの卵のひみつ

ナメクジさんの卵は2~3mmの円形~楕円形で、消臭ビーズの様な半透明~乳白色です。
卵は堆積した落ち葉や腐葉土の中、石や植木鉢の下など常に湿った暗い場所に20~30個まとめて産み付けられます。ナメクジさん1匹あたり200個前後の卵を産み、孵化までに1ヵ月前後かかります。

ナメクジさんの生活のひみつ

ナメクジさんは卵から大人になるまで約半年かかります。前年の晩秋に誕生した赤ちゃんのうち、無事に冬を越せた子、早春の卵から孵った赤ちゃんとも梅雨時の徘徊シーズンまでに腐葉土やキノコ、柔らかい葉を食べて育ちます。梅雨時になると目立ってナメクジさんを見かける機会が増えるのはこのためです。おおむね6月中旬頃までに大人と同じ大きさにまで育ちます。
ナメクジさんは気温が下がり日の短くなる秋を迎えると性成熟して繁殖可能になります。
なお、ナメクジさんの寿命は飼育条件下では2年前後、自然界では1年程度と考えられています。

ナメクジさんの天敵

天敵はさほど多くありませんが、身近な生物としては、マイマイカブリやコウガイビルはナメクジを捕食します。 またナメクジは植物を好むものの、椿の実に含まれるサポニンを嫌う習性があり、忌避剤としても利用できます。

ナメクジさんの生きる世界は思いのほか厳しい

ナメクジさんは巧みな生存戦略を持っていますが生存率は決して高くなく、我が家の庭に棲むナメクジさんの生息密度は毎年一定しており、特別、爆発的に増えることも極端に減ることもありません。住宅の庭という限られた範囲と餌の中でしか繁殖できないため、どんなにたくさん卵を産んでも育つのは一定数に抑制されます。自然界に棲むナメクジさんの場合はさらに数多くの捕食者に狙われるため益々生き残るのが困難になるものと思われます。


以上、今後のナメクジさん対策のご参考になりましたら幸いです。

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