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御器齧(ごきかぶり)を誤植で印刷されたゴキブリさん…。
日本古来より忌み嫌われ続けて、はや千年、現代に生きるゴキブリさんにはちょっぴり同情してしまう残念な出来事があったのでした…。
平安貴族に珍重された渡来品の食器の数々、当時は銀製の器が用いられていたそうです。
これ、今でも大変高価なものですから、平安時代の銀食器は家宝に匹敵する代物だったに違いありません。
事実、これらの器は御器(ごき)と呼ばれていたのです。
庶民と大きな格差のあった平安貴族、食事の際はわざと少量を残して食べ終わるのが、テーブルマナーだったそう…。
とっても、もったいない食べ方をしていたらしいのです。
そんな贅沢な食習慣だったので、そのおこぼれを求めて、とある蟲さんが集まってきました。
3億年の古代より、姿、形を変えずに生き続けてきた正真正銘の生きた化石、ゴキブリさんです。
それはそれは嫌われたことでしょう…。
毎晩、夜な夜な出てきては大切な御器に齧(かじ)りつく黒光りする憎き奴。
平安貴族の間で自然と「御器齧(ごきかぶり)」と呼ばれるようになりました。
それから時代はめぐり明治時代へ。
文明開化とともに世相風俗がこれまでの封建社会から大きく変わった時代、自然科学の分野も教科書を通して広く庶民に伝わりました。
そんな折、例の御器齧(ごきかぶり)について解説された項、原本は正しく「ゴキカブリ」と表記されていたのですが、なんと!あろうことか印字ミスで「ゴキブリ」と教科書に記されてしまったのです。
当時の自然科学の集大成とされる、大変、権威のある教科書だったため、誤字を訂正することもできず、そのまま「ゴキブリ」として現代にまで誤表記が浸透してしまったのでした。
御器齧(ごきかぶり)さん…平安時代が発祥だけに本名でなく“源氏名”で有名になったのでした。
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