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タニサケの コラム

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殺虫剤抵抗性を獲得したゴキブリさんの知られざる生態

ゴキブリ

殺虫剤感受性系統と殺虫剤抵抗性系統との違い

3億年の太古より姿形をほとんど変えずに現存する生きた化石…ゴキブリさん。

その類稀な生き様は殺虫剤の基礎効力試験においても垣間見ることができます。

ゴキブリさんを殺虫剤から遠ざけて数百世代に渡って大切に飼育されてきた正真正銘の箱入りゴキさん。このサラブレッドの様な血統を殺虫剤感受性系統(以下、感受性系統)と呼びます。

反面、汚食事処や汚弁当屋さん、汚部屋に汚水槽‥などと人間の営みの裏側で、これでもかと理不尽に繰り返される殺虫剤曝露を生き抜いてきた百戦錬磨のつわものの血筋、その名も殺虫剤抵抗性系統(以下、抵抗性系統)。

感受性系統と抵抗性系統の相反する生き様

この相反する2つの血統では行動生態が全く異なります。

選ばれしスーパーエリートの感受性系統は与えられた餌をもりもり食べてすくすくと育ちます。実に素直で非の打ち所がないほどまっすぐに、一歩一歩、着実に大人への階段を上ります。

生まれながらにしてアンタッチャブルな世界で生き抜いてきた抵抗性系統では、与えられた餌は必ず毒味をしつつ安全を都度確認しながら、実にゆっくりと時間をかけて育ちます。非常に警戒心が強く、室内が明るい時には姿を見せることはありません。

見た目こそ同じゴキブリさんですが、生い立ちの違いで明らかに行動が異なるのです。

抵抗性系統に見られる特異な生存戦略は、実際に殺虫剤に曝した時にも垣間見えます。

抵抗性系統にみられる驚異的な毒殺回避能力

害虫防除業界でゴキブリ駆除の主力として採用されている有機リン系の防疫用殺虫剤 プロペタンホス。これを規定濃度に調整した上で、滴下して乾かした風乾ろ紙に抵抗性系統を放つと糞の排泄量が増大します。このように抵抗性系統は体内に取り込んだ殺虫剤を、排泄量を増やすことで体外へと速やかに排出し、駆逐されることを回避しているのです。

先述した餌を一気に食べずに毒味するのも毒殺を回避する術として体得したもので、ゆっくりと時間をかけて成長するのも自らの代謝を下げることで殺虫剤への曝露反応を緩やかにして中毒症状の発現を回避しているのです。

このようにゴキブリさんは姿形を進化させるよりも内臓の機能を進化させて生き延びてきた驚異の生物なのです。

抵抗性系統 誕生のひみつと5万頭の修羅場

そもそも抵抗性系統とはどのように誕生するのでしょうか?

それには、複数の誕生理由が存在します。

  • 偶然にも殺虫剤有効成分に対する感受性の低い突然変異個体だった。
  • 死に至らない低濃度で繰り返し曝露したことで解毒代謝機能を高める機会を得た。
  • 抵抗性を獲得した者同士で交尾して誕生した抵抗性一族の子孫だった。

これら様々な理由により殺虫剤抵抗性を獲得した個体群の密度が高まった時、発生現場ではゴキブリさんのパンデミックが起こります。あらゆる殺虫剤が全く効かない驚愕の修羅場!

手をこまねいている間にみるみるとゴキブリさんは繁殖し、いよいよ手に負えないほどの密度にまで増大するのです。その数、戸建て飲食店の場合で軽く推定5万頭に達します。

厨房のみならず建物内のありとあらゆる場所に潜伏する抵抗性系統。その様は、店舗を丸ごと焼き払うしかないほどの様相を呈しています…。

抵抗性系統に粘り勝ちするゴキブリキャップ

汚食事処に見られるチャバネゴキブリの場合、抵抗性系統の1組から丸1年で少なくとも1万頭にまで繁殖し、子孫がそれぞれ新たな家族をもうけるので瞬く間に2万、3万と爆発的な加速度でゴキブリさんが増えていきます。

際限なく増え続けるゴキブリさんに対して殺虫剤を用いることなく根絶することは至難の業。ゴキブリさんの抵抗性系統の出現は私たちに猛烈な脅威となって襲いかかるのです。

タニサケのゴキブリキャップの有効成分は無機質のホウ酸。このホウ酸に対する抵抗性系統の動態は、感受性系統よりも致死までの日数が倍ほどに延長する程度で、全く効かないという事態には陥りません。

抵抗性系統にも粘り勝ち。これが知られざるゴキブリキャップの底ヂカラです。

抵抗性系統の発現が疑われる飲食店さま、毎年のゴキブリ駆除が思うように進まないと感じている方に、殺虫剤抵抗性の発達しないタニサケのゴキブリキャップをお勧めいたします。